森の健康診断の第3回矢作川森の健康診断」報告書より

いつも聞かれる。

「健康診断やって、報告会開いて、報告書出して、それで終わりですか?」

・・・「はい、そうです」と素直に答えることにしている。


報告会が終わると同時に、次の森の健康診断に向けて準備が始まり、健康診断が終わると報告書の作成と報告会の準備に掛かる。毎月1回20人近くの実行委員が集まり半日議題に沿って様々な討論や検討を重ねる。そんなことを繰り返して4年目に入ろうとしている。


さて、冒頭の質問。大勢の参加者であれだけ広範囲に詳細な調査をして、報告だけで終わりですか?健康診断はもうわかったから処方箋や手術をしなければ意味がない!不健康なことはよくわかったから早く手術するように行政や山主に圧力をかけるべきだ。報告書を元に署名運動をするべきだ!・・・それはそう確信された方一人ひとりが、あるいは手をつないで実行に移していただきたい。しかし矢作川森の健康診断実行委員会は敢えてそれはしない。私たちは楽しくて少しためになる森の健康診断を効率を追わず安全に開催し、粛々と報告書にまとめて報告会を開催する、それだけだ。


なぜなら、私たちは森の健康診断に参加した人たちのキヅキとマナビを信じているから。私たちと一緒に森で過ごした参加者達は、人工林の現状や山里暮らしの知恵や森の豊かさを確実に感じ取り学んで帰っている。その彼らが家庭や職場や学校で流域の森のことを伝えてキヅキとマナビの連鎖を拡げてくれている。その一人ひとりが「流域の森を何とかしなけりゃ」「持続可能な林業のプロをたくさん育てなきゃ」などと、一人ひとりが自分の意志で自由に確信を持った発言をしていくのだろう。あるいは森林ボランティアを始めたり、行政サイドで頑張ってみたり、いろんな関わり方が始まっているのだろう。たった一つの答えや処方箋を私たちは強要しない。いろんな分析や処方箋や手術法を報告会や実行委員会に持ち寄っていただきたい。


森の健康診断は全ての調査データを公開している。さらに健康診断当日やその後の感想や意見、そして報告会に寄せられた声も全てこの報告書に掲載している。それだけだ。